自転車のネジと締め加減(トルク管理)について

自転車に限った事ではありませんが、ネジを締めたり緩めたりはメンテナンスの基本です。自転車のネジ(ボルト)の締め付けについて説明させて頂きます。

 

目次

 

はじめに

自転車に限った事ではありませんが、ネジを締めたり緩めたりはメンテナンスや修理の基本です。

ネジ(ボルト)やナットはギュッ~っと力いっぱい締めれば安心と思っている方がとても多いと思います。

「太いネジはギュ~ッと。 細いネジはキュッと。」 ...間違ってはいないのですが、 メンテナンスをしようと思った大切な自転車を壊してしまう前に必ず覚えておいて欲しい事が、ネジの締め加減(トルク管理)です。

 

自転車のネジ(ボルト)の仕組み

自転車のネジ(ボルト)を締め込んで行くとボルトの頭がナットにぶつかります。

そこから更に締め込んで行くとネジの部分はどんどんナットに食い込んで行くのですが、 ボルトの頭は食い込めずに抑えられていますから、頭とネジの間の部分が伸びて行きます。

そして、引っ張って伸ばされたボルトは元の状態に戻ろうとし、 この引っ張られたボルトが元に戻ろうとする状態が維持される事でネジは緩まなくなるのです。

自転車のネジが緩まない理由

 

ところが、必要以上に引っ張ってしまうと、ネジは元に戻ろうとする「やる気」をなくしたり、 切れてしまったり、ナット側のネジ山が耐えられずダメになってしまいます。

これをオーバートルク(締め過ぎ)と言います。

自転車のネジを締め過ぎた場合

 

鉄やアルミの硬い棒が伸びると言う事はイメージし難いのですが、 空になった缶ジュースを持って、親指で押してみてください。

軽く押している時には「ペコ...ペコ...」と、もとの状態に戻って来ると思います。 これはまだ空き缶がやる気を失っていない状態です。

ところが、限界を超えて押し込んでしまうと、潰れて元の状態には戻らなくなってしまいます。 これが、空き缶が完全にやる気を失ったオーバートルクの状態です。

空き缶を潰した画像

 

そこで重要になるのが「ネジの締め付けトルク」です。

自転車のハンドルステムやシートクランプに 6-8Nm とか、12-15Nm とかプリントされている事が多いのですが、 自転車のネジ全ての部分で、ネジがやる気を出してから、やる気を無くすまでの数値が決まっています。

規定トルクのプリント

 

太いボルトは規定トルクのMin(最小値)とMax(最大値)の幅が広いのですが、 細いボルトは規定トルクのMin(最小値)とMax(最大値)の幅が狭いですから、 自転車のような細いボルトを使用する物ほどトルク管理が重要になります。

自転車のネジの締め付けトルクについて

1m(100cm)の棒の端に100gの重りをぶら下げた時の力が1Nmになりますが、 1mの六角レンチって普通売っていませんよね。

だいたいセットで売っている六角レンチは10cm~15cmくらいの物が多いと思います。

長さ10cmの六角レンチなら、端っこに1000g(1kg)の重りをぶら下げた状態が1Nmですから、 ハンドルステムなど、5Nmで締め付ける部分はレンチの端に5000g(5kg)の重りをぶら下げたくらいの強さで締める事になります。

長さ15cmの六角レンチなら、端っこに666gの重りをぶら下げた締め加減が1Nmですから、 ハンドルステムなど、5Nmで締め付ける部分はレンチの端に3300g(3.3kg)の重りをぶら下げた感じの強さで締める事になります。

このあたりで 「面倒臭いなぁ~」 と思ってしまう人は、迷わず自転車屋へ持って行くべきです。

早くて安くて確実です。

そういう計算とかするのは面倒臭いけれど自分でやりたい!! と思うなら校正証明書付のキチンとしたトルクレンチを買いましょう。

2万円程度で売っています。

トルクレンチ

 

トルクレンチの作り方

そんなハイテクな道具なんかには頼らずに、少し手間はかかったとしても手軽に入手できる材料で、 できるだけお金を掛けずに行うのがDIYの醍醐味だよ!!と思うなら、 トルクレンチを自作する方法もあります。

15cmの六角レンチを使用したとして、家にある物や簡単に調達できる材料でトルクレンチを作るなら、 大人限定にはなりますが、4Lのペットボトル焼酎、タコ糸、ビニールテープを用意します。

濃いめが好きか?薄いめが好きか?によっても変わりますが、 サワーを7~8杯作って飲めば、焼酎がだいたい3.3kgくらいにはなると思います。

自作トルクレンチの材料

 

焼酎のペットボトルが滑り落ちてしまわないように六角レンチの端にビニールテープを巻いて、 タコ糸で縛った焼酎をそっとぶら下げれば5Nmでボルトを締め付ける事ができます

自作トルクレンチ