ハンドルステムの取り付けや調整の方法
簡単そうに見えて、大失敗してしまう事が多いハンドルステムの取り付けや調整の方法を、仕組みや構造を交えて解説いたします
目次
- はじめに
- ヘッド部分の仕組みと構造
- フォークコラム(鉄やアルミ)とハンドルステムの位置調整
- フォークコラム(カーボン)とハンドルステムの位置調整
- アヘッドキャップボルトの締め付け
- ハンドルステムの固定
- 最終確認
はじめに
側面の2本のボルトを緩めてアヘッドキャップを外し、ハンドルクランプ部分のボルトを外せば ハンドルステムは取り外しできますから、ステムの位置を変えたり交換するのはとっても簡単そうですが、 当店のユーザーさんに 「何度でも何年でも無料で調整するからハンドルステムとフロントディレーラーだけは触らないで!!」 と、お願いしているのには理由があります。
数十万円もする特殊工具を使う必要があれば、相当なマニアでない限り手を出さない筈なのですが、 誰でも持っている簡単な工具ででき、作業自体も簡単そうに見えるからと言って、にわか知識で行ってしまい、最悪の結末を迎えると言うのを今まで数多く経験しているからです。
フレームが折れて大けがをするくらいなら、フィッティングやライディングポジションなんてハッキリ言ってどうでも良いです。
簡単そうに見える部分こそ、構造と仕組みをシッカリ理解した上で作業を行って下さい。
ヘッド部分の仕組みと構造
アヘッドキャップがハンドルステムやコラムスペーサーを下に押し付けてヘッドのガタツキを押さえています。
結構勘違いされている方が多いのですが、アヘッドキャップは水が入らないようにする為の蓋などではありません。
下の画像ではアヘッドキャップが浮いてしまっており、ハンドルステムやコラムスペーサーを下に押し付けられていませんから、ヘッドのガタツキを押さえる事ができません。
ヘッド部分にガタツキがあるまま使用してると、ブレーキの度にハンドルとフォークが前後に揺さぶられ、最後はフレームが破断してしまいます。
最近はインテグラルヘッドと言うベアリングがフレームに内蔵されているタイプのスポーツ車が多く、その場合は少しのガタツキが残っているだけで ベアリングを押さえているフレームが変形しますから、いくら調整をしてもガタツキを押さえる事ができず、フレーム交換と言う形になってしまいます。
とくに、ヘッドのガタツキは振動を何も受けていない新車のうちに起こりやすく、数回調整を行ううちにだんだん頻度は減ってきます。 また、フロントにサスペンションが付いていないモデルほど早いタイミングでガタツキは出てきます。
初めは「クッ...」次は「コクッ...コクッ...」次は「ゴクッ...ゴクッ...」 次は「ゴクン!ゴクン!ゴクン!」と言う感じで、 ガタツキやネジの緩みと言うのは徐々に大きくなってきます。
自転車屋はこれが仕事ですから少しのガタツキも気が付くように気をつけているのですが、 かなり激しくガクガクするようにならない限り、「自分で適当に分解した」とか、「転倒した」など、思い当たる節がないとユーザーさんは気が付きませんので、 時々他人の目で見て貰うと言う事も重要だと思います。
フォークコラム(鉄やアルミ)とハンドルステムの位置調整
最低でもハンドルステムの上面からコラムスペーサーの厚みを引いた位置(Aの地点)より下に フォークコラムの上面が来るようにセットする必要がありますから、その場合はコラムスペーサーを追加します。
アヘッドキャップの形状にもよりますが、ハンドルステムの上面からフォークコラムの上面まで4mmくらいあれば良いと思います。
それなら、アヘッドキャップのボルトが届く限りたくさん隙間を開けておけば良いのでは? と思うかもしれませんが、 それだとフォークコラムを少ししかクランプできていませんから、フォークコラムやハンドルステムの破損に繋がります。
反対にフォークコラムをハンドルステムから飛び出させて、ステムの上にコラムスペーサーを乗せて固定する分には問題ありません。
フォークコラム(カーボン)とハンドルステムの位置調整
フロントフォークのコラムがカーボンの場合は取付方法も異なりますし、ほかにも注意する点があります。
カーボンコラムは変形させると割れてしまいますから、変形させず均等に圧力をかける為に、 フォークコラムの締め付け部分がカットアウトされている物や、後部のスリットが斜めになっていない物は使用しないで下さい。
組付けはステム全体がフォークコラムを均等に締め付けできるように、必ずハンドルステムの上に5mm以上のコラムスペーサーを載せて下さい。
アヘッドキャップボルトの締め付け
アヘッドキャップのボルトを締め付けて、ヘッドの玉当たり調整を行います。
締め付け加減は3~4Nmです。六角レンチの短い方を差し込んで締め付けると締め過ぎてしまいますから 六角レンチは長い方を差し込んで、軽く親指と人差し指を捻る力だけで締め付けて下さい。
ハンドルステムの固定
最後にハンドルが真っすぐになっているかを確認してハンドルステムを固定します。
締め付け加減はステムによって異なりますから、ステムにプリントされている締め付け加減で固定します。 (一般的には最大で5.2Nmくらいの物が多いです。)
スポーツ自転車が趣味で、色々な作業を自分で行おうと思っている方がトルクレンチを持っていないとは想像したくありませんが、 旅先やサイクリング中などでトルクレンチを用意できない時はあると思いますから、普通の六角レンチで締め付ける方法を書いておきます。
六角レンチの短い方を差し込んで締め付けると、ほぼ確実に締め過ぎてしまいますから 六角レンチは長い方を差し込んで、親指と人差し指を捻る目一杯の力くらいで締め付けて下さい。
最終確認
自転車に跨って、ハンドルを左右に動かした時に、スムーズにハンドルが動くかを確認して下さい。
最後に、前ブレーキだけをギュッと掛けた状態で乗車し、前後にハンドルをゆすって下さい。
ガクガクや、コクッコクッ、と言う感触が手に伝わらなければ完成です。
これにてハンドルステムの取り付けや調整は終了です。お疲れさまでした。